2014.08.30.sat/メイプルホール
吉本新喜劇の人気女優・末成由美(すえなり・ゆみ)さんと箕面の子どもたちが共演する「みのおキッズシアターwith末成由美」。
9年目、第9弾となる今回は「なないろ夏休みと約束」編と題して、8月30日(土曜日)、31日(日曜日)の二日間、メイプルホールで盛大に上演されました。
参加した子どもたちは、役者30人、ダンサー6人。3カ月の稽古を経て迎えた本番の舞台で、これまでの成果を惜しみなく披露しました。
いよいよ迎えたオープニング。元気いっぱいのダンスで、カラフルな衣装の子どもたちが、舞台狭しと躍動します。
続いて末成さんがテーマ曲に乗って登場し、子どもたちと一緒に踊ったあと、おなじみのギャグを一発。全員ずっこけました。
末成さんが口上を述べ、全員で「ご期待ください」と声を揃えると、会場はさっそく大きな拍手に包まれました。
<ストーリー>
薄闇の中、集まってきた妖怪たち。何やら相談しています。
「みんなでこの村を出ていかんか?」
人が減り、いずれ消滅する予定の村。妖怪が存在できるのは、人間がいればこそ。
多くの妖怪たちが賛同する中、カッパのきょうだいのカワヒメ・カワタロウは、まだ出ていけないと言います。
「ここで一緒に遊ぼうって、約束したんです」
約束した相手は、人間の女の子。しかしそれは、70年前のことだったのです…。
村はずれの池のほとりに、今日も由美ばあさんは一人でいます。
そこへやってきたのは、幼なじみの俊ばあさんと孫。
由美ばあさんに、転居を勧めに来たのです。
しかし由美ばあさんは、頑なに誘いを断ります。
「ナナと約束したんや。ここで一緒に遊ぼうって…」
その頃、村へと向かって歩く姉妹の姿がありました。
都会から、汽車に乗ってやって来たのです。
二人の目的は「おばあちゃんの妹さんの友だち」に会うこと。
元気かな、その人。会えるといいな…。
村では、子どもたちが元気に遊んでいました。
しかし、多くの子が転居する予定で、こうして遊べるのもあとわずか。
「せっかくだから、夏休みの共同自由研究で、この村の謎を調べてみない?」
この村の謎とは、由美ばあさんのことでした。
カッパと友だちだというのですが…。
ところ変わって、ここはとある町の中学校。
演劇部の生徒が、芝居の稽古をしています。
とはいうものの、スマホに夢中の部員たちは、さっぱり稽古に身が入らないようす。
そんなとき、スマホに情報が入ります。
「カッパを捕まえたら、1億円!?」
訪れた村の子どもたちに、由美ばあさんは自分の子どもの頃の話をします。
戦争で両親を亡くし、一人で生きてきたこと。
戦争は嫌だと広言したため、非国民とののしられたり、殴られたりしたこと。
ある日、イモを盗んだ疑いをかけられ、争っているうちに、池に落ちてしまった由美。
助けてくれたのは、カッパのカワヒメとカワタロウでした。
カッパを恐れない由美は、これをきっかけに、二人と友だちになったのでした。
翌日、再び由美ばあさんを訪れた村の子どもたち。
カッパを求めてやって来た、演劇部員たちも一緒です。
由美ばあさんは、話の続きを始めます。
村にある日、見慣れない女の子がやって来ました。
疎開もんと呼ばれていじめられ、泣かされていたその子は、ナナといいました。
由美はいじめていた子どもたちを追い払いますが、「友だちになって」というナナの言葉にはうなずこうとしません。
「ウチと一緒におったら、あんたまでいじめられる」
それでもナナは、由美の後を追い続けます。
ついに由美は、カワヒメとカワタロウをナナに会わせます。
カッパをまったく恐れないナナに、由美もようやく心を開き、4人の奇妙な友情が始まりました。
ある夕焼けのきれいな日。ナナはとっておきの砂糖を取り出し、みんなになめさせます。
かぶっていた麦わら帽子を由美に贈るナナ。
由美は何かをナナに伝えようとしますが、また明日も遊べるから、と手を振って別れます。
また明日、遊ぼうねと約束して。
「…その時からずっと、こうしてここで、ナナを待ってるんや」
語り終えた由美ばあさん。そこへ、都会からやって来た姉妹が到着します。
二人はなんと、ナナの姉の孫だというのです。
祖母の遺品から、ナナが書いた由美宛ての手紙が出てきたため、それを届けに二人はやって来たのでした。
「それで、ナナは?ナナはいま、どうしてるん?」
「ナナさんは、この手紙を書いてすぐ…亡くなったそうです」
手紙には、由美への思いがつづられていました。
遊ぼうと約束した日の朝、急に迎えがきて、住んでいた町に戻ったこと。
家は焼けており、バラックで暮らしていること。
由美に教わったおかげで、食べられる虫や草を探すのが得意になったこと。
でも今は病気になり、思うように起きられないこと。
あの村で、四人で過ごした日々の楽しかったこと、一緒に遊ぼうという約束を果たせなかったこと、そして由美への感謝の言葉。
聞き終わった由美は
「違う!ちゃうねん!ウチの方こそ、ありがとうと言いたかったんや!こんなウチと友だちになってくれて、ありがとうって…。
あの日、言おうと思ったのに、明日も会えると思って、言わずじまいやった…」
身を切るような言葉に、話を聞きに来た子どもたちは、気持ちを伝えることの大切さを知り、共にむせび泣きます。
「ナナ…ありがとう…ありがとう…!」
由美の涙ながらの呼びかけに、ナナの幻が浮かび上がり、「由美ちゃん」と応えます。
由美の「ありがとう」は、時を超えて、ナナに届いたのでした。
一部始終を知った妖怪たち。
「なあ、ワシらも、もう少し待ってみようやないか。また人間たちが帰ってきて、にぎやかになるのをな」
カワヒメ、カワタロウらと共に、妖怪たちはうなずくのでした。