2014.03.11.tue/北小学校

宮沢賢治の童話「セロ弾きのゴーシュ」は、とある楽団の若いチェロ奏者・ゴーシュの物語です。
へたくそで、みんなの足を引っ張ってばかりいたゴーシュ。
夜、一人で練習していると、いろいろな動物たちがやってきます。
ねこ、かっこう、こだぬき、ねずみの親子。
彼らとの交流から、ゴーシュは演奏する上で大切なことを学んでいくのでした…。
日本センチュリー交響楽団のチェロ奏者・佐野穣一(さの・じょういち)さん(箕面在住)が3月11日(火曜日)に北小学校を訪れ、5年生たちに「セロ弾きのゴーシュ」にちなんだ曲を披露しました。
これに先だって、5年生たちはゴーシュの物語を、地域のおはなし会のかたから読み聞かせてもらっていました。物語に出てくる音楽を実際に聴けるとあって、子どもたちは興味しんしんのようすでこの日のコンサートを迎えました。
「ひるすぎみんなは楽屋に円くならんで今度の町の音楽会へ出す第六交響曲の練習をしていました。」
佐野さんが演奏したのは、ベートーベンの交響曲第六番「田園」。作中には、誰の作品か具体的に書かれていませんが、ベートーベンの第六番のメロディは、なるほどゴーシュたちが弾いたのはこんな曲だったろうか、と思わせてくれるようでした。
夜、ゴーシュのもとにやってきた大きな三毛猫が、こんなことを言います。
「トロメライをひいてごらんなさい。きいてあげますから」
にやにやしているねこに腹を立てたゴーシュは、「印度の虎狩り」という激しい曲を弾きはじめるのでした。
佐野さんがチェロの演奏で、その場面を再現します。
シューマン作曲「トロイメライ」は、子守唄のように静かで美しい旋律です。
間近で聴く、生演奏のチェロの豊かな響き。子どもたちは、どこかうっとりと聴き入っています。
ドガン!
突然の大きな音に、全員飛び上がりました!
佐野さんが、いきなり舞台を力いっぱいに踏みつけたのです。
あの静かな演奏はどこへやら、いまやチェロは吹き荒れるあらしのように、猛烈な速さでうなりを上げています。
「印度の虎狩り」。
実はこれは架空の曲ですが、「もしあるとすればこんな曲」と佐野さんが選んだのでした。
物語の中で、びっくりして走り回ったねこの気持ち。
子どもたちは、充分に理解したことでしょう。
コンサートの合間には、チェロ演奏の体験コーナーも設けられました。
やや小さめのチェロを抱えて腰かけ、子どもたちは弓をおそるおそる弦に当ててみます。
ブゥゥオォォォォー…
やった!音が出た!
そうそう、その調子。そのまま続けて、同じ音を出せるかな?
そうして、佐野さんといっしょに三重奏に挑戦です。
初めてながら、リトル・ゴーシュたちの手つきはなかなか堂に入ったもので、周りからは拍手喝さい。
演奏した子どもたちも、嬉しそうな笑顔を見せていました。
宮沢賢治自身も、チェロを演奏したそうです。
彼が惚れ込んだその音色を、たっぷり堪能した1時間。
静かな曲はじっくりと、楽しい曲には手拍子しながら、子どもたちはチェロの演奏を心ゆくまで楽しんでいました。