2012.10.16.tue/西江寺

ドーーーン
ドーーーン
山から降ってくる太鼓の音が、夜のまちに響いています。
「そうか、今夜は天狗まつりだったね」
音に誘われるように、坂を上っていく人の流れ。
聖天宮西江寺の境内、普段は閑静で落ち着いた雰囲気ですが、この夜ばかりは…
「!」
石段を上ってたどり着くと、大勢の人で境内はごった返していました。前に進むのもままならないほどの超満員、ものすごい人口密度。数百人はいたでしょうか。
そんな人ごみの中を、疾風のように駆け抜ける妖しい影。長い白髪を振り乱し、真っ赤な顔の中央に、ニョッキリ伸びた長い鼻。
天狗です!
群集に躍り込み、手にした竹の「ささら」で、当たるを幸い片っ端から人の頭を叩いて回ります。その激しさに、泣き出す子ども、逃げまどう子ども、嬉しそうな(?)子ども…もちろん大人も容赦なし、悲鳴を上げながら叩かれていました。
太鼓の音は、ドーーン カッ ドーーン カッ ドン ドン 「やらまい!」
拝殿の前で、白腹巻姿の男衆が、太鼓に合わせて囃します。
するうち、太鼓が急調子になり、境内を暴れまわっていた天狗が、一直線に拝殿を目指して駆け上がってきます。
拝殿の中には獅子舞が陣取り、天狗とにらみ合います。太鼓に合わせて素早く左右に動きながら、突入しようとする天狗を阻むように、戯れるように、ひとしきり激しく舞います。
攻防が一息つくと、太鼓は再びゆったりとした調子を奏で、天狗もまた境内で一暴れしに戻っていく…このサイクルが何度も繰り返されました。
聖天宮西江寺(さいこうじ)の秋季大祭は、毎年10月15日が宵宮、16日が本宮となっています。天狗は修験道の開祖・役行者(えんのぎょうじゃ)の化身と言われ、天狗に頭を叩かれると賢く、体を叩かれると健康になると伝えられています。
無病息災、子孫繁栄。人々の願いを込めて、古来より続けられてきた秋のまつりは、今年も大盛況でした。