みのおキッズシアターwith末成由美「角の記憶」

2010.08.28.sat/メイプルホール

みのおキッズシアターwith末成由美「角の記憶」

「人間が、角のある俺たちの存在を認めないのなら、いっそ…」
「まさか?おい…やめろー!!!」

あの吉本新喜劇の人気役者、末成由美さんと箕面の子どもたちが共演する「みのおキッズシアターwith末成由美」。5周年を迎える今回は、桃太郎伝説を題材にした作品「角の記憶」が上演されました。

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夏休みの公園、子どもたちの前に現われた怪しいおばあさん。何かお話を聞かせて、とせがむ子どもたちに「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが…」「なんや、桃太郎の話なんかみんな知ってるわ」しかし、おばあさんの話は、よく知られた桃太郎の話とは少し違っていました。

 むかしむかしのとある村、おじいさんとおばあさんに拾われ、桃太郎と名づけられた男の子。手のつけられない暴れん坊に育ち、子分を従えて我が物顔でのし歩くようになりました。そんな桃太郎と村の子どもたちは、深い森の中で不思議な少女・ルカと出会います。大ケガをした村の子を治す力を持つ、その子の頭には角が。「鬼だ!鬼が出た!」
 逃げ帰った桃太郎たちの話を聞いた、村の大ババさま。鬼の角には万病を治す力があり、高値で取引されることを知っていた大ババさまは、桃太郎に鬼退治を命じます。「よいな、角じゃ。角をたくさん取ってくるのじゃぞ」しかし、出立の前に、桃太郎はおじいさんとおばあさんから、自分の出生の秘密を聞かされるのでした。「まだ赤ん坊のお前を拾ったとき、お前の頭には…」「そんな…嘘だ!」
まったく気の進まないまま、鬼退治に出かける桃太郎。同行した鬼の子・ルカは「私は、生まれたときに生き別れになった双子の兄を探している」と打ち明けます。そんな二人の前に、森の妖精たちが現われ、二人を鬼の住む里へと導きます。
 鬼の里では、人間の迫害を逃れた鬼たちが、ひっそりと隠れ住んでいました。貴重な薬となる鬼の角を求めて、人間たちは幾度となく鬼を襲い、今では生き残りはほんのわずか。
「そうか…桃太郎、お前がルカの、本当の…」「じゃあ、私のお兄ちゃんって…!」
ようやく、自分の出自が明らかになった桃太郎。そんな彼に、鬼のリーダー・ダイはナタを渡して言います。「角は俺たちの誇り。だが、この角のために、人間は俺たちを狙う。お前が鬼退治をしなくても、別の人間がまたやってくるだけだ。桃太郎、ならばいっそお前の手で…」「!」

 人間の村に戻ってきた、桃太郎。無事を喜ぶ村人たちをよそに、大ババさまは「角はどうした、早く角を出せ」しかし桃太郎は拒絶します。「いやだ!この角は、誰にも渡さない!」
桃太郎の心に、あの鬼たちの言葉が響きます。「桃太郎…どうかお前は、人間も鬼も争わなくていい、そんな世を作ってくれ…」

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 公募で集まった箕面の子どもたち、役者35人、ダンサー17人。3ヶ月の稽古で、ぐんぐん伸びたというその演技は、大人もプロの役者も顔負けの内容で、末成由美さんも全力の演技でそれに応えていました。
 フィナーレ、カーテンコールで舞台に勢ぞろいした出演者たち。時にはつらかった稽古も、みんなで力を合わせて乗り越え、この日を迎えることができた。そんな喜びに、一つ一つの顔が輝いていました。

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